ダブル・キャスト(高畑京一郎/メディアワークス)

川崎涼介、浦和涼介、同じ名を持つ二人の少年。全く対照的な彼らの人生が、ある出来事で交わり、奇妙に絡み合っていく。
タイトルと主役二人の名前から、どういうタイプの物語なのか察することができる人もいるでしょうけど、具体的なことは書かないでおきます。今年の流行から考えてNANAみたいな話かと思う人もいるかも知れません。そういう想像もアリでしょう。(この作品自体は五年以上前のものです)
前作「タイム・リープ」はミステリ風の時間SFという体裁でしたが、今作はアクション活劇となっています。SF色は薄く、ファンタジー的とすらいえるのではないでしょうか。(エスエフ⊇ファンタジーという見方もありますが、その辺詳しくありません。ここでは一応別物と分けて書いてます)
構成はシンプルで読み易く、また、読者に向けた、作文上の引っ掛けとでもいうべき仕掛けがあちこちに施されてまして、それに気づいてからの文章を読み込む面白さがあります。それと、作品の舞台に「タイム・リープ」と共通する部分が見えまして、前作を知る人は少しだけおまけの楽しみが得られるところがあります。
ただ、前作があまりに面白すぎたんだなぁ……というのが正直なところです。食い入るように読ませた前作に比べて淡白な作りに、拍子抜けの感はありました。この作品の水準が高いことは確かなのですが……。もっとも、これは多分に僕自身の嗜好性によるものでして、今作の方が面白いという人も多いことでしょう。僕にしても、キャラクターの多彩さという点はとても好きだったりします。北澤、柱谷、長谷部の三人が個人的によかった。
それにしても高畑京一郎はクールでタフな男たちを書くのが好きでしょうがないんだなぁと、三作品読んでようやくわかってきました。そういうところがライトノベル作家らしくなくて、僕はとても好みです。